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Bed For The Scraping / Fugazi / '95

今日的なプログレを探すとしたらポストハードコアというジャンルになるのだろうか。その代表は彼等“フガジ”だろう。パンクのサブジャンルとして純化/単純化したHC、その様式美が揺らぎ拡散する切っ掛けを作った伝説のバンド“マイナー・スレット”。フガジは、そのVoイアン・マッケイが現在まで15年も活動しているバンドである。マイナースレットは83年時点で最速の強度とアンサンブルによってシーンで存在感を示しながら、次第にアレンジを複雑化、HC定型を崩しはじめる。その後HCは80年代を通して純化と拡散を繰り返す(この時代のHCをhiphopから借りた言葉で現在ではオールド・スクールと呼ぶ)。80年代末にその様式の極端な形がスラッシュと交配、また90年代からはその他ジャンル(hiphopやレゲエ、スカやアイリッシュ!)と混ざり合いながら延命する。
イアン・マッケイがマイナー・スレット解散後、本腰を入れるフガジは当然定型のオールド・スクールであるはずもなく、構造としてはインプロビゼーションを元に作り出されたハードコアマナーによる広義のロックである。これはHCと他ジャンルの掛け合わせでは無く、HCの脱構築とも呼べる大胆なものであった。彼等が何故この様な事が出来たかはイアンの姿勢によるものが大きい。彼のレーベル“ディスコード”は地元のシーンに関係のあるバンドしかリリースしないインディー主義で一貫され、商業主義に陥らずワシントンDCという土地柄の反権力思想とDIYに貫かれシーンからのリスペクトされ続けている。パンク/HCはメタルやhiphop同様コミュニティーミュージック故、サークルからはみ出た音はジャンルとして認められないのだが、彼のシーンへのスタンスがHCをはみ出しても認められうるスケールを持っていたから出来たことなのだ。
この曲は95年の4枚目のアルバムから。彼等のフォロワーが地元ワシントンDC以外にも全米各地に現れ始めた頃のアルバムで、HCという狭い枠から逸脱しながら大きなロックンロォルの枠さえも広げた実験性を獲得している。以後のエモシーンの雛形にもなり、ポストハードコアの定型を量産させた功罪はあるが、ロックンロォルとして兎に角素晴らしい。

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