200songs-162

quawabe2005-04-29

Subterranean Homesick Blues / Bob Dylan / '65

50年代の創世記を経て、ロックンロールの歴史でターニングポイントになるのは当然ビートルズ。62年のデビュー当時はたわいのない商業音楽としてロックンロールリバイバルした彼ら。実際は、オリジネーターの毒や棘にあたる部分は随分ソフィスケイトされ、万人受けするポップスとして米英大ヒットしたのだった。60年代前半、ビートルズは音楽的でこそあったが精神性においてはロックンロォルを体現していたとは言いがたい。
その毒や棘は白人向けには、非商業音楽であるアメリカン・フォークが担っていた。その代表的存在だったのはボブ・ディラン。彼は「風に吹かれて」「時代は変わる」等の社会派のプロテスト・フォークで知られ、この時代の公民権運動のシンボルと目されていた。
この曲トーキング・ブルーズ・スタイルの元祖ホワイト・ラップ「サブレタニアン・ホームシック・ブルース」と収録アルバム「ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム」は彼がアコースティック・ギターをエレキ・ギターに持ち替えた記念すべき作品で、65年7月のニュー・ポート・フォーク・フェスティヴァルでブーイングを受けたことでも有名な作品。当時、フォークとロックンロール(ブリティッシュ・ビート)には大きな支持層の開きがあり、フォークは知的でシリアスなインテリの音楽、ロックンロールは軽佻浮薄な女子供向けと考えられていた。
聴衆がフォークのシンボルがロックに転向すると解釈するのも分からないでも無い。しかしディランは決してロックンロールを否定してはいなかったし、ロックンロールとフォークを分けて考えてもいなかった。ディランのルーツは50年代ロックンロールから、ホーボー・フォークのウディ・ガスリーを中心にシカゴ・ブルーズのロバート・ジョンソン、カントリー&ウェスタンのハンク・ウィリアムス等、そしてビートニクであり、真っ当なロックンロールのルーツそのままである。ロックンロールのルーツには、当然アメリカン・フォークの流れやそれ以前のアイリッシュ/東欧のルーツ・フォークやポルカだって存在する。その流れを改めて電化させて増強させる事をディランは選び取ったのだ。フォークもロックンロールであるとし、ここにフォーク・ロックが完成した。
65年、これでロックンロールは文学的哲学的シリアスな表現も可能な音楽として聴衆側も成立したことになる。以後、ビートルズも内省を深め「ラバー・ソウル」を、ストーンズは毒である「アウト・オブ・アワ・ヘッズ」と「サディスファクション」を、フーは棘である「マイ・ジェネレーション」を発表する。
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