不埒、不条理、Fカップ 九

ロックンロォルとはドラムだなぁ。。。と最近DJをやる度に確信する矢先、渋谷屋根裏で“不謹慎シンドローム”主催のライブイベント“不埒、不条理、Fカップ 九”を見てきました。
出演5バンド中2バンドが女性ドラマーであり、結果的に強く印象を残したのは彼女達でした。

まず主催の不謹慎シンドロームはホワイトストライプスと同じ二人組。音的には似ているのはブルーチアーかな。♂ギターはストラトからカールコードでマーシャルアンプ直刺し。♀ドラムはスネアの奥にフロアタムがあり、その直角に置かれたバスドラの両側にシンバルという変則構成。こんなドラム見たことない。ステージを左右半々に使って向かい合うのも初めて見た。おまけに彼女は真っ赤な透けたキャミソールを着て胸元(Fカップ!?)を開け、叩くたびに谷間が揺れるパフォーマンスつき。彼女のシアトリカルな小物と小芝居は若干アングラ風だがステージは本格派。
爆音ギターの音圧に圧倒されながらプリミティブな太鼓が響きわたるのだ、これはロックンロールの原始的な快楽をかきたてられる。ロックンロールがブルーズから譲り受けた猥雑さを強調した音である、50年代の白人が畏怖した野蛮と野生とまがまがしさを抽出した爆発である。このハードな音は肉感的エロスを鼓舞させリビドーを暴発させるための祭り囃なのだ。といっても暴力的な男性的な印象はなく、スリッツ(オープニングSEがケチャであった)に似た無邪気さと母性を思わせる所もある。♂の幼児的暴力性を♀の包容力で包んでいるのがわかる。非常に大味ながら本質的なロックンロォルの快の部分、ラウドなドカドカ太鼓と電気的に増幅されたノイズ、それを抽出した音だった。

もう一組の注目はネクラポップ。アフターフリッパーズな一連のバンド同様にUKギターバンドのフォーマトに沿いながら自意識の高い文学的詞を呟き叫ぶタイプの、ソングライティングの巧みな楽曲のバンドであったが、ライブバンドとしても楽しめた。ノイズ担当の様なサイドギターとギターヴォーカルがそれぞれ勝手にぶち切れる、ライブはこうでなくちゃ。しかし刮目すべきはその後ろで暴れる女性のドラム。珍しくキープやシャッフルが魅力的な退屈させない渋く力強いスタイルだが、いざキメに入るとタムは回すしシンバルはバシャバシャ、すげぇダイナミクスで左手のボコボコいうスネアのアタックが気持ちいい。楽曲のタメから解放になるに部分でタイコの音が豹変しグイグイひっぱる、という構造としてドラムが非常に重要な所に位置している。彼女の音でなければかなり凡庸なイメージになってしまってノイズ合戦もしらけた物になるのではないか、ぐらいの活躍をしていた。自閉したポップバンドにならずドラムがロックンロォルバンドにさせているのだ(あ、これはくるりと同じ構造かも)。これはファンになってしまう音っぷりだ。

いいドラムを持ったバンドはどんな曲でも耳を惹いてしまうものだなぁと思う秋の日。