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Just Another Victim / Helmet & House Of Pain / '93

このサントラ“ジャッジメント・ナイト”によってミクスチャーの時代は一つ区切りを付けられる。ダイナソーJrやヘルメットやマッドハニー、ソニック・ユースパール・ジャムやセラピー?といった所謂グランジムーブメント下にオーバーグラウンドしてきたバンド群がヒップホップチームとコラボレーションしたこれらの曲は、ある意味これまでの何でもありのミクスチャーというカテゴリーに狭い輪郭を与えたのだ(リスナーにではあるが)。
この中で3曲目、古参のミクスチャーバンドのリビングカラーはオールドスクールのランDMCと組みオーソドックスなラップファンクメタルを披露している。しかし次の曲オニキスとニュースクールHCのバイオハザードの強靭なコラボレーションを前にしては、その古株のコラボはこの年デビューのレイジ・アゲインスト・マシーンの無惨なカヴァーに聴こえてしまうのである。レイジとバイオハザードが次の時代のミクスチャーの定型を紡ぎ出しミクスチャーはモダン・へヴィーなるジャンルに固定化する。ファンクは引きずる事をやめ、音楽的には重い人力ブレイクビーツにスラッシュマナーの弦が乗り、わざと流麗なラッピンではない怒号を叩き付けるという方向に固まってしまう。それはある意味自然なクロスオーバーというより、意識的に衝撃を与える為に選択された新しいメタルであった。
ここで取り上げるヘルメットと組んだハウス・オブ・ペインは、サイプレス・ヒルなどとソウルアサシンという白人系ヒップホップグループを形勢するアイリッシュ系白人チーム。代表曲ジャンプ・アラウンドはニルバーナのプロデューサーのブッチ・ヴックのリミックスを作らせるなど、ロックフィールドでも有名であった。彼等はこの後解散し、DJリーサルはシュガー・レイのデビューアルバムをプロデュースし、おまけになんとリンプ・ビズキットに加入する。実はDJリーサルこそがミクスチャーを終わらせ、モダン・へヴィーを作り上げる最重要人物なのだ。
余談であるが、スレイヤーと組んだアイスTは思いきりスラッシュ方向に歩み寄り、UKハードコアのディソーダーのカバーを3曲くっつけた激速バージョンを披露している。彼のバンドボディー・カウントを過激に押し進めた方向で全く黒い音ではない。失笑を買う程にスラッシュでコラボの意味はないが、結果としてスレイヤーもこれ以上のテンションの曲を本家で作れないでいる。これもある意味、ミクスチャーの終わりを象徴する出来事である。
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