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Higher Ground / Red Hot Chili Peppers / '89

御大レッチリ様である。今日的なアメリカン・ロックを代表する彼等もブレイク当時はエキセントリックな色物であった。白人パンクバンドがファンクをやるというツギハギのぎこちなさを、体力と馬鹿パワーの勢いでまとめあげたキャラクターでブレイク。同様の同胞であるフィッシュボーンが、シリアスな面を持つ黒人であったがゆえ消えてしまったのと対照的に、徹底的に陽気にメンバーの死亡や脱退までもカリカチュアした存在として一般化してしまった。ロックンロォルにファンク経由の黒さを取り戻しながら、ラップを取り入れ、へヴィー・メタルの重さを捨てず、パンキッシュな炸裂感を保持して、90年代のロックンロォルのスタンダードを確立する。
パンク/メタルのジャストもしくは前乗りのビートとファンクに端的に現れるブラックの後乗りのグルーヴは完全に対立する物として当時捉えられていた。しかし彼等に代表されるミクスチャー第一世代はその対立項を、つんのめったビートと引きずったファンクリズムの二つをボランチの様に掛け持ちながら、エネルギッシュなテクスチャーとして紡いでいくことで強引に解決してみせたのである。縦と横をまさに縦横無尽に動き回る音と隙間がミクスチャーの快楽として結実したのである。これはスケーターが自らのフィーリングを元に奇抜なトリックを誕生させて行く様を思わせる、フィジカルな獲得物である。
取り上げたのはスティービー・ワンダーの有名曲カバー。重厚なスラッシュでありながら原曲以上にファンキーに仕上げたミクスチャーの方程式を体感出来る1曲。
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