これ面白いです

quawabe2004-07-13

菊地成孔東大ゼミ非公式websiteから無断転載です、スミマセン。
http://f37.aaacafe.ne.jp/~skmogura/index.html

菊地成孔氏による「12音平均律→バークリーメソッド→MIDIを経由する近・現代商業音楽史」っていう東大の講義録です。管理人の方がいっしょけんめ聴き起こしたんで簡単にコピぺするのも悪いかとは思うんですが。
自分はロックンロォルしか聴かないことにしたんで(笑)正直必要ないですが、ロックの特殊性っていうのは、ジャズの様な純音楽からどこが離れてしまっていて、何がトンチンカンで、何が素敵なのか、再確認する為にも熟読しています。でも理論はむつかしいのでちょっとも分からないんですけどね。

「リズムの発達史についてですが、一般的に巷で良く言われている、2ビートから4ビート8ビートから、16ビートといった言説を鵜呑みにしてはいけません。ジャズにおいては、4から16に直接飛んでいて、8ビートは全く別の文脈として、ロックを演るための特殊なフィギュアとして存在しています。8ビートというのは、他のビートの要素を何でも近似値として、強引に突っ込む為のフォーマットで有り、何と言われても良いので断言すると、リズムが悪い人の為のフォーマットです。ゴダールの映画[ワン・プラス・ワン]では、ローリング・ストーンズが、アフリカのパーカッショニストの力を借りてやっと一曲成立させる姿が、描かれていて、ロック・スターとはこんな楽な商売かと思わせるのですが、」「でも、カッコ良いんですけどね。」「リズムの良し悪しと、音楽のカッコ良さというのも全然別物なんですが。」「ブラック・ミュージックの歴史においては、具体的に鳴っていなくても、常に、16分よりも細かく分割されて(意識されて)いる。これはやはりアフリカ音楽に、起源を求める事が出来るのですが、こういった<等分割時間/不等分割時間>、<等分割和声/不等分割和声>、<等分割チューニング/不等分割チューニング>とくに<律動>の問題に関しては常に、パンの塗るジャムのような扱いを受けて来たのですが。これらについては、追々後期に採り上げて行ければと思います。」

そーーーなんですよ。“ワン・プラス・ワン”で「悪魔を憐れむ歌」を延々スタジオで作ってるんですが、あの曲は最初はストーンズ流サンバを作る予定だったんですね。でもどんどん白くなっていって最終的にあの状態になるんですよ。ハッキリ言ってミックは分かってなかったって曝されちゃってますよ。チャーリーはいつもの様に4のようなの薄ーく叩いてて、殆ど聴こえません。ビルはベース取り上げられて、キースが弾いてます。ブライアンはスタジオのはじっこに体育座りでいじけてます。16より細かいパーカッションをミックは強引に8の近似値に手直しさせてラシイ仕上げにしてゆくのが映画の見どころです。案外キースは面白がってベースで色々やってるんですけどね。
自分の知っている限り、8から4にはまっていった人は4ビートのスルメの様な味わいにはまって抜け出せず、ロックに戻ってきません。4って言ってもその中の細かいので楽しくなっちゃうんでしょうね、みんなジャンプに行くみたい。帰っておいでー(;o;)/~~

アンプリファイアの導入については、ロックからの援用となりますが、これはロックンロールとその原型であるブルースの音楽構造が<ノイジー>、これは、ディストーションを早くから多用していたといった話では無くて、そのリズム構造・和声構造自体が、特に複雑な和声構造を持たず、また<ブルース進行>自体が、機能和声的には異端の存在、<脱近代的>で有ったが故に、電化<アンプリファイア>と相性が良かったという事が原因と考えられます。反面ジャズは、バッハを根源に持つ機能性を大きく引きずっていたが故、<濁り>に対する反発は大きかったと言えます。ジャズ理論は<モード>を経て、<脱バッハ>、<脱近代>に向う訳ですが、<モード>と<アンプリファイア>は相性が良かった、<アンプリファイア>は<濁らせる>という目的を持っていた訳ですが、倍音の強調、あらゆるエフェクトによる音色変化、フェンダー・ローズに代表される定位の変化、といったあらゆる<脱バッハ>的な楽器の在り方がもたらす<秩序の混在>による<ミスティフィケイション>が、所謂<マイルス・マジック>の一端を担っていたと言えます。」
「その昔、エレクトリック・ギターの教則本に良く有った記述に、ディストーション・エフェクト(特にダイオード・クリップ式の物)を使用する場合は、決して3(6)度音程を弾いてはいけない! というのが有って。まぁ気持ちは判らないでも無いのですが。(かの成毛茂氏だけは、決してそんな事は言わなかった記憶も僅かに有るのですが。)結果的に、このWARNINGは、後の世に何でもかんでも低音弦でのドローンのみで楽曲を処理するギタリストの大群を生産する役割を果たしたのでは無いかと。(笑)
その昔、SONIC YOUTH少年ナイフが参加したカーペンターズのトリビュート盤を聴いた時、バークリー・メソッド全開で作曲された楽曲を、何がなんでもルートのドローンで押し通すと局面によっては、無茶苦茶面白い事になる(原曲の和声感が頭に入って無いと笑えないのですが、例えばパッシング・ディミニッシュとかの局面でこれをやると、とんでもない事態が起こります)事が分かりました。これは是非今度、スティーリー・ダンのトリビュート盤を、本邦の若手パンク・バンドの諸氏に奮って参加して頂き(以下略)」

ロックの中心がギターになる必然もこの辺りになるんでしょうか? ブルーズの濁りですね。よく分からないのはコード展開の少ないブルーズの歌がロックになってどんな風に白人的になったのか、ってことです(メロディアスになったのか?)。歌の事は本題とはあまり関係ないですが聞いてみたかった。
でもなんだかんだ言って、菊地成孔のキャラで持っていますよ、毒のある軽口は好きですけど、真面目にやられたら寝ちゃいますね絶対。